
小売業や自社でECサイトを運営されている方であれば、耳にされたことがあるかもしれません。海外の小売業界では既に幅広く浸透・定着していますが、まだまだ日本では黎明期と言える状況です。
今後、日本国内においてもリテールメディア市場は拡大していくことが予想され、その特徴や市場に与えるインパクトを的確に把握しておくことは、新しい収益機会の獲得やデジタルマーケティングの手法を模索する上で必要不可欠です。
本記事では、なぜ今これほどまでにリテールメディアが注目を集めているのか、その背景と理由について解説するとともに、リテールメディアを活用する側・消費者側のメリットを、小売事業者・EC事業者・広告主の皆さまに向けてご紹介します。
新たな購買体験と売上を創出するリテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売事業者が運営するECサイトや店舗アプリ、リアル店舗の店頭に設置されているデジタルサイネージなど、小売事業者が提供している様々なメディアを指します。
新たな購買体験をデザインする手法として、リアル店舗、ECサイトにおいて様々な取り組みが展開されています。

リテールメディアの仕組み
リアル店舗の事例では、オフライン上で得た店舗での購買データと、オンライン上で得たアプリの利用データを連携させ、顧客の属性や嗜好に適した商品のクーポンを配信することで、店舗での購買促進に加え、メーカー企業による顧客のニーズに沿った商品広告の配信による広告収益で、新たな収益を生むことに成功しています。
また、ECサイトでは検索結果に表示する商品に加え、顧客データに基づきそれに関連する他のメーカーの関連商品を広告として表示する仕組みを構築することで、新たな購買体験を提供するとともに、メーカー企業からの広告収益を生み出している事例もあります。
このように小売事業者やEC事業者は、これまで商品販売のみで得ていた収益以外に、広告プラットフォーマーとしての新たな収益機会を獲得できるのが大きな特徴です。
なぜ、いまリテールメディアへの関心が高まっているのか?
リテールメディアが注目されている背景には、3rd Party Cookieの利用規制や、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人々の購買行動がオフライン(リアル店舗)からオンライン(ECサイト)に移行が進んだことがあります。
3rd Party Cookieの規制により、1st Party Dataの活用にシフト
近年は、GoogleやAppleが3rd Party Cookieの廃止を表明し(Googleは2024年後半目途、Appleは既に実行済み)、デジタルマーケティングにおけるプライバシー保護が強化されています。
また、日本国内において2022年4月に改正個人情報保護法が施行されたことで、Cookieをはじめとした個人に関連する情報を第三者に提供し、個人情報と照合・紐づける場合は本人の同意取得が必要となったことも、業界に大きなインパクトを与えました。
そうした時代背景と、プライバシー保護の規制強化に向けた国や企業の取り組みにより、従来行なっていた3rd Party Cookieで取得したデータを活用したリターゲティング広告の配信や効果検証が困難になりました。こうしたことから、大手広告主を中心にFacebookやTwitterなどのメガプラットフォームに依存した体制から脱却し、自社で持つ1st Party Dataを最大限に活用したマーケティング施策のあり方を模索する動きが活発になってきました。
日本国内だけでなく、世界的に3rd Party Cookieが規制されることもリテールメディア活性化の追い風になっており、3rd Party Dataより精緻である1st Party Dataをデジタルマーケティングに活用しない手はないと言えます。
パンデミック(コロナウイルス)の影響による、ライフスタイルの変容
リテールメディアがこれほどまで活発になった大きな理由のもう一つに、新型コロナウイルスの感染流行・拡大があります。
パンデミックにより世界的に外出自粛の規制が敷かれた2020年以降、消費者の購買行動はオフラインからオンラインへと急速にシフトしました。
オンラインで買い物を経験した世帯の割合は、コロナが本格的に蔓延する2020年1月から翌2021年1月の間で約120%伸長しているというデータ(※)からも、如何に人々の生活にオンラインショッピングが浸透してきたかが見て取れます。
※出典:
コロナ禍で拡大したデジタル活用/総務省「家計消費状況調査」
日本国内においても、コロナ禍に突入した2020年頃から新たな広告・宣伝の場としてリテールメディアが徐々に認知され始め、ドラッグストアやコンビニエンスストア、ショッピングモールや家電量販店を中心に、参入する企業が増えています。
いずれも、リアル店舗においてポイントカード等を発行することで顧客が登録した会員データや購買データを収集し、顧客本人の同意を得た上で、プライバシー保護に準拠した形でマーケティング活用されています。
リテールメディアが叶える「三方良し」のビジネス
リテールメディアは、自社サイトやアプリをメディア化する小売事業者だけでなく、そこに広告出稿するメーカー企業(広告主)と、ECサイトや店舗アプリを使って買い物を楽しむ消費者それぞれにメリットがあります。

リテールメディアの三方良し
消費者のメリット
リテールメディアは、登録された顧客情報や購買データを活用して顧客ニーズにフィットした広告を配信することが可能です。言い換えると消費者は、自分の興味・関心が高い商品に触れることができ、最適なタイミングで情報を取得できるようになります。こうしたコミュニケーションの最適化は消費者にとっての不要な広告や告知をなくし、より快適な購買行動に導くとともに、新しい購買体験を提供できます。
小売事業者・ECサイト運営者のメリット
リアル店舗に加えて店舗アプリの導入や、Web上にも店舗(ECサイト)を構えることで、販路が拡大し新たなユーザー層にアプローチができることがリテールメディアの大きな特徴です。また、クーポンの付与等の施策を通じて来店や自社アプリの利用を促す効果も期待できます。
さらに1st Party Dataを活用することで、ユーザーに対する効率的なサービスの利用促進や休眠防止、休眠の掘り起こしなど、CRMの改善とカスタマーロイヤリティの向上に伴って売上の伸長を実現します。
店舗内やECサイト内に広告枠を設置することで、メディア事業による収益(広告収入)を確保できます。
広告主のメリット
リテールメディアに出稿を行う広告主(メーカーなど)は、情報検索や購入検討を行うユーザーに対して、自社のサービスや商品を露出する機会の創出や潜在顧客へのブランディング、マーケティングを展開できます。1st Party Dataを活用することで精緻な効果測定に基づき、広告運用を行うことも可能です。
また、ユーザー自らが何らかの商品購入のために訪れる店舗アプリやECサイトと、GoogleやFacebook等のメディアを比較した時、モチベーション(購買意欲)が高い店舗アプリ・ECサイトのユーザーに対して親和性が高い広告を出稿できることも、広告主の大きなメリットの一つです。
リテールメディア市場の動向
前述のとおり、リテールメディアは元々、米国において活発に推進されてきたデジタルマーケティングの手法です。日本国内においても小売業界の参入が活発になっています。
海外におけるリテールメディアと、その活用事例
小売業は昨今のインフレや物流コストの上昇により、商品を販売しても収益として得るマージンが低いことや、大手ECプラットフォーマーの寡占による利用者の流出で、新たなビジネスモデルの創出が求められています。
そんな中、リテールメディアへの取り組みで成功し、話題を集めたのが、米国に本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであるWalmart(ウォルマート)社です。
同社は、2021年初頭に広告プラットフォーム事業「Walmart Connect」を立ち上げました。リアル店舗で収集した顧客情報を活用し、店内のデジタルサイネージや自社のWebサイトで広告を配信しています。
また、店内には壁面や決済端末に広告を表示できるようディスプレイを多数設置し、広告媒体として活用することで、メーカーなどから収益を得る仕組みを構築しています。
同社における2021年期のグローバル広告事業の年間売上高は、21億ドル(約2,400億円)に達したとされています。
国内におけるリテールメディア
2022年9月に、 CARTA HOLDINGSとデジタルインファクトが共同で実施したリテールメディア広告市場に関する調査(広告主によるリテールメディア広告への年間支出総額が対象) では、2026年に市場は805億円規模にまで成長すると予測されています。これから先3年間で約6倍伸長する予測から、あらためてリテールメディア市場に対する注目度の高さが伺えます。

※出典:2022年9月 株式会社CARTA HOLDINGS
まとめ
今回は、ポストCookie時代の新しいデジタルマーケティングの形であるリテールメディアについてお伝えしました。
これから益々市場が活性化されていくことが期待されるリテールメディアについて、まだよく分からない、何から取り掛かれば良いのか手探りだ、という事業者の方も多いと思いますが、Supershipでもリテールメディアビジネスのサポートをしておりますので、是非お気軽にご相談ください。
S4Ads(エスフォーアズ) https://www.s4p.jp/s4ads/
ECサイト内に商品広告の出稿機能を容易に組み込むことができるソリューションです。ECサイト内に広告枠を設置し、メーカーやモール出店者に向けた広告販売機能を提供することで、商品販売以外の広告による新たな収益を創出することができます。
PROMOTAG(プロモタグ) https://supership.jp/business/promotag/
ラストワンメートルの範囲に特化し来店者の購買率を向上させるコンテンツを実装し、流通・小売企業が持つ店舗アプリを、データマーケティングに活用できるアプリにカスタマイズするSDKです。アプリの活性化により接客の高度化とユーザー利用の拡大を両立させるだけでなく、ユーザーの行動データを活用した広告事業のマネタイズ化も実現できます。
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